外科とは

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外科は、外科的治療、いわゆる手術が必要なケースの場合に対応する診療科になります。外科をするには内科の知識が必要であり、良き外科医は良き内科医である必要があります。動物病院は全科診療を行う場であり、麻酔外科の知識技術が優れている事が良い動物病院の必要条件となります。一般外科として不妊手術、外傷などの創傷を扱うほか、腫瘍外科(胸腔腫瘍摘出、断脚、腹腔腫瘍摘出、下顎切除など)、消化器外科(異物摘出、胆嚢粘液嚢腫摘出など)、泌尿器外科(腎臓、尿管、生殖器、膀胱、尿道 など)、整形外科(骨折、前十字靭帯整復筋、膝蓋骨脱臼整復など)も当院にて対応しています。当院で対応ができない専門性の高い手術が必要と判断した場合は高次の医療センターへ紹介させていただいています。

診察の結果、何らかの手術が必要という場合は、飼い主様に対しまして、治療方針や内容、費用などについて詳細に説明させていただき、ご確認とご同意(インフォームドコンセント)を得たうえで、外科的治療を進めていきます。

外科で扱う主な手術療法

不妊(去勢)手術

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単なる繁殖防止の手段ではなく、避妊去勢手術を受けることにより将来的に起きる多くの病気の予防が可能であり天寿を伸ばすとも言われています。また、特定の疾患の治療効果を高める、治療の一部としても実施されています。
メスでは乳腺腫瘍(初回発情前の手術実施の場合、ほぼ0%に出来ます)、子宮蓄膿症、卵巣腫瘍、膣腫瘍など発症率が高く、重症化をしやすい病気がいくつもあります。オスでは会陰ヘルニア、前立腺腫大、精巣腫瘍(腹腔内精巣、停留精巣はガン化しやすい)、肛門周囲腺腫瘍など、こちらの多くの疾患が含まれます。
高齢になって手術が必要になるケースがほとんどですが、手術中はいつも「この病気は避妊、去勢で防げたのに・・・」と残念な気持ちになります。また、問題行動(スプレー(所構わず尿をかけてしまう猫の行動)、攻撃性やマウンティング(順位付け行動)を軽減させる効果も期待できます。デメリットとしては、麻酔をかける必要がある事、何らかの痛みを伴う処置であることが挙げられます。

当院では衛生的な手術室、充実した手術麻酔関連機器を用意し、堅実な手術チームの編成(麻酔担当者、執刀医、助手、機械出し、外回り等手術内容によって3~5人)を基本として麻酔安全性を高めています。
また、鎮痛処置を積極的に行うこと、耐性菌の発現を抑えるため抗生物質の使用を極力控えること、術後ウェアの使用を推奨するなど、動物のストレスを最小限にすることを心がけています。

不妊(去勢)手術によって、予防することができるとされる主な疾患

オス

前立腺肥大症、精巣腫瘍(がん)、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫 など

メス

子宮蓄膿症(主に膿が子宮に溜まる)、乳腺がん、卵巣がん など

代表的な外科疾患の紹介(写真を載せたいと思います、後日提出)

会陰ヘルニア(渡邊式メッシュ法を採用しています)

骨盤~肛門周囲にかけての筋肉が緩んでしまい、排便困難となる病気です。主に未去勢のオスに発生する治療の難しい疾患です。初期には排便に時間がかかる症状だけですが、進行すると骨盤部の筋肉がすっかりと委縮してしまい、合併する直腸の拡張と弛緩、骨盤部の支持組織を失いうことによる前立腺、膀胱の変異と反転逸脱、小腸の逸脱などを伴い重篤な全身症状を示すようになります。従来の手術法では再発率が高く獣医泣かせの疾患でした。当院では、プロリンメッシュを用いた渡邊式整復法を行うことにより、再発の少ない安定した術後経過を得ています。

消化管異物摘出(内視鏡含む)

近年は小型犬が多いためか、様々な異物を誤飲し来院するケースが増えています。異物の形状、大きさ、素材により診断に苦労するケースもあり、速やかに治療方針を決定しなくてはなりません。原因に比べて意外と治療が大変なアクシデントです。当院では動物用催吐剤を用いた内科治療、高精細な電子内視鏡を用いた日帰り異物摘出、開腹手術(胃切開、腸切開など)などを組み合わせ最善と思われる治療法を提案しています。

歯周病

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イヌの歯周病は高齢化と、子犬の頃からの歯磨き習慣が徹底されていないために、近年治療依頼が多い疾患です。歯石の付着により重度の歯肉炎、口臭、血混じりのよだれが増え、悪臭を放つようになります。人とは異なり歯そのものは溶けにくいのですが、歯周病菌により顎の骨が溶かされてしまい強い不快感と合併症を起こします。犬歯や奥の臼歯は根が深く、接している鼻腔、眼窩、皮膚に感染が波及します。
小型犬では下顎が細いため歯周病による骨溶解で骨折をしてしまうこともあります。こうなると治癒させることは困難かつ高額となるため早めの処置が必要になります。麻酔や費用への懸念から後回しにしてしまう方も多いのですが、歯は痛みも強く生活上のストレスになります。常に口腔内に歯周病菌が感染しているため免疫系への負担が増え元気も無くなっていきます。放置し重症化すると当然治療費も余計に掛かります。

当院では事前に必要な検査を行い、麻酔のリスクを最小限にする取り組みを行っています。歯科処置後に飼い主様から「すごく元気になった、もっと早くやってあげればよかった」とお話しいただく事がよくあります。CTに加えて歯科レントゲンも完備していますので、まずは診察をご検討ください。

猫:会陰尿道ろう形成術

オス猫は尿道が細く先端が詰まりやすいため、尿道閉塞による排尿障害、急性腎不全を起こしやすい特徴があります。早期であれば尿道カテーテルによる導尿と食事療法で管理できますが、症状を繰り返しますと尿道が痛み、瘢痕化、繊維化し狭窄を起こしてしまいます。こうなると内科治療ではうまくいきません。当院では会陰尿道ろう形成術を行っています。近年は包皮粘膜を温存して自然な排尿が可能となる手術法を取り入れています。繰り返しの尿路閉塞でお困りの方はご相談ください。排尿の悩みから解放された猫さんはとても元気になりますよ。

骨折

小型犬では前足の橈尺骨骨折が最も多いです。骨折治療においては「いかに骨折部を安定化させるか」が重要なのですが、強固すぎる固定は骨の治癒を遅らせるばかりか逆に骨吸収を起こす(骨折病)ことが知られています。体重の軽い小型犬においてはこの、固定と動揺のバランスをとることが難しく、良い道具が必要となります。
当院では主にLCPプレート(シンセス)を用いた手術を行っています。LCPは骨への圧着に伴う血流障害が起こりにくく、かつ必要十分な固定強度も得られるため近年急速に普及してきました。また、必要に応じてダブルプレート法も行っています。部位により当院で対応できない場合は遅滞なく高次の専門医をご紹介しています。骨折治療は早期に開始すること、手術までの骨折部の管理が大変重要です。状況により最適な治療法をお勧めしますのでご相談ください。

膝蓋骨脱臼整復(滑車造溝、脛骨粗面転殖、ラテラルスーチャー等)

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通称パテラといわれる疾患で、小型犬でよく起こる膝の整形外科疾患です。
膝のお皿(膝蓋骨)が大腿骨の溝からズレてしまい、筋肉がおかしな位置に変位してしまいます。膝蓋骨と大腿骨が擦れることにより痛みが生じ、進行するにつれて膝関節の捻じれが酷くなります。膝がまっすぐに使えないため複合する軟部組織(前十字靭帯、内側半月板)損傷によりさらに複雑化します。こうした重症例は最終的に膝を伸ばすことが出来なくなり歩行困難へと進行する場合もあります。多くの術式がありますが、ゴールデンスタンダードは無く手術は難しい部類に入ります。
当院では積極的に整形外科セミナーに参加して、講義、実習を修了した獣医師が手術を担当しています。都心部では整形外科専門医も活躍しておりますが、遠方かつ高額なネックとなります。何とか地元でも手術をしてもらえないか、との声に応えるべく数年をかけてトレーニングを重ねてきました。重症例では専門医をご紹介するケースもありますが、当院で対応可能な症例も多くあります。お気軽のご相談ください。

前十字靭帯断裂(関節外法)

膝関節内の前十字靭帯が切れることにより膝の不安定性が生じます。初期は痛がるのですが、しばらくする歩行自体は可能になります。しかしながら残存靭帯から発生する炎症物質や、半月板損傷などの合併により慢性関節炎へと進行し痛みに悩まされるようになってしまいます。また、1年程度で反対側も損傷する可能性が高く、これを防ぐことも出来ないとも言われています。大型犬、小型犬問わず発症しており早期の外科介入が必要な疾患です。様々な術式が試されていましたが、近年ではTPLOもしくは関節外法のどちらかが選択されるケースがほとんどです。TPLO(専門医へ転院もしくは専門医招聘による院内手術)、関節外法(当院獣医師執刀)どちらにも利点があります。犬種、性格、年齢、費用などを考慮し最善と思われる方向性を提案します。